男のからだ研究室・第2回
「その気がないのに、勝手に勃起する」「したい気持ちはあるのに、途中で軟らかくなる」。大地の体を前に、千景が気になったことを遠慮なく聞いていきます。黒瀬の解説で、感情とは別に動く仕組みと、硬さを支える筋肉を整理しましょう。
- 気持ちと勃起が一致しない理由
- 血液が入り、硬さが保たれる仕組み
- 会陰の筋肉と括約筋の違い
- 角度・大きさ・維持しやすさの個人差
- 無理をしないための受診の目安
勃起は「筋肉で持ち上げる」より、血液で内側から張る仕組み
中心になるのは、神経の合図で血液が入り、海綿体が膨らむ反応です。そこに会陰の筋肉が加わり、硬さを支えます。肛門を締める筋肉だけで、ペニスを立たせ続けているわけではありません。
血を入れる。戻りにくくする。付け根の筋肉が補助する。
この三つを分けて考えると、「鍛えれば全部解決するのか?」という疑問も整理できます。
気持ちがなくても、勃起するんですか?




朝の勃起は、「今したい」という気持ちとは別に起こる
勃起のきっかけは一つではありません。考えたり見たりした刺激、触れたときの反射、睡眠中の体の働きなどが関係します。本人が意識して命令しなくても起こるため、気持ちと反応が一致しないことがあります。
千景:「じゃあ、朝そうなっていても、何か考えていたとは限らないんですね」
黒瀬:「そうです。睡眠中の反応が、起きたときまで残ることもあります」
逆に、望んでいても体が反応しないことはあります。勃起の有無から好意や欲望を決めつけず、同意は本人の言葉と意思で確認します。参考:NHS系性保健サービス「The Penis」
硬くなるまでを、三つの働きで見る
- ① 血を入れる神経の合図で、動脈と海綿体内の平滑筋が緩む。
- ② 戻りにくくする海綿体が膨らみ、血液が戻る静脈を圧迫する。
- ③ 筋肉が補助する付け根にある筋肉の収縮が、内圧と硬さを支える。
海綿体は、血液を受け入れる空間をもつ組織です。左右にある陰茎海綿体へ血液が入ると、外側を包む丈夫な膜である白膜との間で、血液が出ていく静脈が圧迫されます。血が入りやすく戻りにくい状態になり、内側の圧力が上がります。
ここで大切なのは、最初に緩む筋肉があること。ペニスの中の平滑筋が緩むから、血液が入りやすくなります。一方、付け根で硬さを補助する筋肉は収縮します。「全部を強く締めればいい」という仕組みではないのです。
合図が弱まったり、血液の流れが変わったりすると、海綿体から血液が戻りやすくなり、軟らかい状態へ戻ります。参考:神経による性機能の調節/NIDDK:勃起とEDの仕組み
「肛門の少し前で頑張っている感じ」の正体は?
陰嚢と肛門の間のあたりを会陰(えいん)と呼びます。今回の二つの筋肉は、骨盤底と協調して働く、浅い会陰部の筋肉です。近くにある肛門括約筋とは区別します。
坐骨海綿体筋(ざこつかいめんたいきん)は、左右に分かれた陰茎海綿体の根元を包みます。収縮して根元を圧迫し、陰茎海綿体の内圧を高める働きがあります。硬さの補助を考えるときに重要な筋肉です。
球海綿体筋(きゅうかいめんたいきん)は、中央の陰茎球を包みます。尿道海綿体側に作用し、射精時に内容物を送り出す働きにも関わります。二つは同じ場所・同じ役目の筋肉ではありません。
大地:「肛門を締める感じはあるんだけどな」
黒瀬:「近い筋肉が一緒に働くためです。感じた場所だけで、どの筋肉かを正確には分けられません」
研究でも、二つの筋肉を刺激したときに上がる圧力の場所は異なりました。漫画ではまとめて「勃起を支える筋肉」と紹介していますが、同じ強さで同じ役割を果たす、という意味ではありません。参考:海綿体筋の刺激と内圧の研究
そこまで見るのかよ。




黒瀬の補足:漫画は動作を説明するためのイメージです。外から見えるのは皮膚や付け根などの動きで、二つの筋肉そのものが見えているわけではありません。動いたかどうかだけで、筋力や勃起機能の良し悪しも判定できません。
弱くなったら、筋トレだけで戻せる?
会陰・骨盤底の筋肉の働きが弱いことは、硬さを保ちにくい一因になり得ます。ただし、血液が十分に入らない、神経の合図が伝わりにくい、ホルモンや薬が影響しているなど、別の要因もあります。
骨盤底筋の運動が役立った臨床試験はありますが、指導や生活習慣の改善などを組み合わせた研究です。「この筋肉を締めれば誰でも治る」とは言えません。参考:骨盤底筋運動とバイオフィードバックの比較試験
動作を確かめる場合も、強くいきむことや長時間締め続けることを目標にしません。呼吸を続け、力を抜く時間も取り、痛みがあれば中止します。排尿を何度も途中で止める練習にはしません。うまく分からない場合は、泌尿器科や骨盤底のリハビリを扱う医療者へ相談してください。参考:ケンブリッジ大学病院の骨盤底筋運動案内
確認のために裸になる、他人に見せる、触ってもらうことは必要ありません。漫画の姿勢は演出であり、必須のトレーニング姿勢ではありません。
上向きなら強い? 大きいほど維持できる?
ペニスは人によって長さ、太さ、形、角度が違います。上向き、水平に近い向き、軽い曲がりなど、見た目だけで機能を点数化することはできません。大きさと「どれくらい硬く保てるか」も、同じ指標ではありません。
千景:「大地さんと僕で角度が違っても、勝ち負けじゃないんですね」
大地:「なんでも比べりゃいいってもんじゃねえだろ」
大きさを比べるなら、少なくとも非勃起時か勃起時か、どこから測ったかという条件をそろえます。今回の漫画の描画から二人の実寸や勃起力を推定することはできません。参考:形・大きさ・角度の個人差
もともとの形とは別に、曲がりが新しく現れた、痛みや硬いしこりがある、変化が進んでいる場合は泌尿器科へ相談します。参考:NHS「Peyronie’s disease」
「したいのにできない」を、気持ちの問題だけにしない
疲れ、緊張、ストレス、飲みすぎなどで、一時的に勃起しにくくなることはあります。一度反応しなかっただけで「もう駄目だ」と決める必要はありません。相手への気持ちがない証拠にもなりません。
一方、繰り返す場合は血管・神経・ホルモンの問題や、薬の副作用が関係していることがあります。朝に勃起する日があることだけで、体の問題をすべて除外することもできません。参考:NHS「Erectile dysfunction」/NIDDK:症状と原因
まず整えるのは、血管の健康と無理をしない生活
適度な運動、禁煙、飲酒量の見直しは、勃起機能の改善にも役立つ場合があります。高血圧や糖尿病などの持病がある場合は、その管理も大切です。疲れている日は休息を取り、毎回「できるか」を試して自分を追い込まないようにします。
薬が関係していそうでも、自分で中止せず処方した医師に相談します。治療は原因や体の状態によって異なるため、筋トレやサプリメントだけで何とかしようとせず、困っていることをそのまま伝えて構いません。参考:NIDDK:治療と生活習慣
長く続く勃起や、急な痛みは放置しない
勃起が3~4時間以上続いて戻らない場合は、救急での評価が必要です。4時間を超えるまで待とうとせず、医療機関へ連絡してください。強い痛みや外傷、急な腫れ・出血がある場合も、長さに関係なく早急に相談します。参考:NHS「Priapism」
勃起しにくい、途中で軟らかくなる状態が繰り返すときは、泌尿器科やかかりつけ医へ。いつから、どんな場面で起こるか、持病や服薬を伝えると相談が進めやすくなります。
血流が主役。神経が合図し、筋肉が支える
勃起は気合いや一つの筋肉だけで起こるものではありません。海綿体へ血液が入り、戻りにくくなることで硬さが生まれ、会陰の筋肉もそれを補助します。
- 気持ちと体の反応は、いつも一致するわけではない。
- 肛門括約筋と、坐骨海綿体筋・球海綿体筋は別の筋肉。
- 角度や大きさだけで、勃起機能は判断できない。
- 筋トレだけで解決しない場合もある。繰り返す不調や痛みは相談する。
「どうして動くのか」を知る。動かなかった自分を責めるためには使わない。
本記事は一般的な身体教育のための解説です。漫画は創作であり、診察・筋力測定を再現したものではありません。個別の診断や治療は医療機関へ相談してください。参考資料の確認日:2026年9月4日。
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黒瀬 理一 健康科学を専門にする大学講師。仕組み、安全確認、出典を担当する。
瀬野 千景 遠慮なく聞く助手。大地を巻き込むが、毎回自分も実演へ巻き込まれる。
相原 大地 体験モデル。率直な感想を話し、説明不足や嫌なことには明確に止める。






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